任意売却が生まれた背景と政策
任意売却が生まれた背景には、現在の経済の状況と関係しています。不動産の売買が盛況で価格が上がり続けていた時代には、住宅ローンが返せなくなっても、不動産を売却すれば、返済できる場合がほとんどでしたが、ここ10年以上のデフレの状況下では、売却しても住宅ローンの残債が残ってしまい完済できないという状況になってしまっています。また、デフレの状況では、給与も上がることが少なく、また、雇用が非正規の割合が多くなり、正規雇用よりも給与が下がることになり、住宅を取得しても、住宅ローンが返せないケースが多く発生してきました。物が売れない時代として会社の倒産も多くなり、従業員がリストラされて収入がなくなり、住宅ローンを返せない状況にもなっていました。そのために、大手の金融機関が不良債権処理に苦しむことになり、サービサー法が執行されました。サービサーとは債権回収会社で法務大臣から許可を得た民間の債権管理回収業者のことです。この法律により、不良債権処理の一つとして、任意売却という方法が一般的に広まってきました。それまでは、裁判所による強制的に売却する競売という方法がとられてきましたが、不動産の私的な売却方法として任意売却という新たな方法も用いられるようになってきました。たとえ住宅ローンが払えなくなっても、自分の不動産を自分が売却するという権利は当然あります、今までのような競売では、本人の意思に反して、強制的な競売という手間と費用をわざわざかけてやるよりも、本人の意思で任意売却を行うことの方が経済的には合理性があると言えます。アメリカのように何でも訴訟に持ち込むというのは日本の風土に合っておらず、特に、不動産売買のような民事的な行為のトラブルに関しては、債務者、金融機関などの債権者、債権回収業者、が話し合いにより解決することは、日本国内においては妥当な行いであると言えますので、不動産を任意売却で処理することは、日本の風土に適した処理の仕方であると言えるのではないでしょうか。